【風景演劇 応援メッセージ】植田良子 氏からのメッセージ

posted on 2022.03.25

東温で延べ約一ヶ月間アーティストが滞在しながらリサーチと作品創作を行ない、東温の河之内地区にある棚田と豊かな水のある風景を舞台に、この瞬間・この場所でしか見られないパフォーマンス作品を発表する今回の“風景演劇プロジェクト『風景によせて2021 かわのうち あわい』”。

開催にあたり、香川県にて多岐にわたって演劇制作活動をされている植田良子氏から今回の滞在アーティスト“ソノノチ”の皆さんに応援メッセージをいただきました。
全国各地から香川にアーティストの受け入れもされている植田氏から今回の東温初のアーティスト・イン・レジデンスについて、四国において他地域のアーティストが作品を創作することについてなどを踏まえたメッセージとなっています。

ぜひご一読ください。

【応援メッセージ(植田良子 氏)】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

愛媛のお隣、香川を拠点に演劇制作活動を続けています、シアター・デザイン・カンパニーの植田と申します。この度は、東温市でのソノノチさんの滞在制作の様子を、隣の県より、大変うらやましく眺めておりました。

地域において、演劇などのパフォーミング・アーツのことを考えるとき、「触れる機会が少ない」ことがよく問題として挙げられますが、私自身は、それと同時に「選択肢が少ない」ことも大きな問題であると考えています。それは、観る側にとってもそうですし、創る側にとっても同様です。年に数回だけやってくる一流のものを観ることで、それで満足させられてしまう、それが地域の現状ではないかなと。一流は「本流」とも乱暴に言い換えられるかもしれません。ですから、本流ではなくても、選択肢の1つとして地域の人たちに胸を張って紹介できる、そんな作品やアーティストと出会えたとき、私はこのうえなくワクワクするのです。

私が8年前にシアター・デザイン・カンパニーを立ち上げてから関わった企画の中で、特にワクワクしたものを3つ挙げるとすると、ぺピン結構設計『パラダイス仏生山―演劇まちあるきー』(2015-18)、江本純子作演出『大部のできごと』(2016)、指輪ホテル『讃岐の晩餐会』(瀬戸内国際芸術祭/2016)になります。この3つの作品はすべて、野外の、既存の劇場ではない場所を舞台としていました。普段何気なく歩いている道、遠足で行ったきりの史跡、潰れた工場跡。自分たちの住む地域に、新たな視点からアートの手法が加わることで、見慣れた世界がより色鮮やかに見えてくる。それは、とても新鮮で、とてもワクワクする体験でした。

だからこそ、ソノノチさんの活動は以前からとても気になっていました。京都を拠点とする彼らの目と耳、体を通して、この四国の風景はどんな風に描かれるのか。劇場ではない場所で、東温の風景や人や食べ物や、それらをどう受け止めて、どう差し出してくれるのか。きっと、『今、ここ』でしか体験できない作品を私たちに見せてくれることでしょう。想像するだけで、めちゃめちゃワクワクしています!そして、いつか香川でもお願いします!

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植田良子(うえだりょうこ)氏

<プロフィール>
香川県高松市出身。シアター・デザイン・カンパニー代表。演劇制作。
2000年に劇団活動を開始、2003〜06年「さぬきシェイクスピア」(演出:安田雅弘)にて制作を担当。2014年にシアター・デザイン・カンパニーを立ち上げ。「演劇と人と場所を繋ぐ」ことをテーマに、様々な作品上演に関わる。
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